インフレリスクとは 物価上昇に伴うリスク

インフレリスクとは、インフレーションによる貨幣価値の下落で損失をこうむるリスクのことです。言い換えると物価上昇よりも資産価値の上昇が低ければ実質的に資産は目減りすることになります。こうしたリスクがインフレリスクといえます。

多くの資産運用商品はインフレリスクに対して強いのですが、現金や定期預金、債券などはこのインフレリスクに弱い商品です。

インフレーションとそのリスク

インフレーション(インフレ)という言葉自体はニュースなどで聞くことも多いと思います。(むしろ近年はデフレ(デフレーション)が取り上げられることが多いですが・・)

インフレとは、通貨の価値が下落し物価が上昇することを指します。仮にインフレ率が年2%という場合、今年100円で買えた商品が来年は102円ださないと買えないということになります。デフレの場合はその逆で安く買えるようになります。

こうしたインフレの進行は資産価値を結果的に減少することになります。今年の預金100万円はインフレ率が高くなれば、今年と同じだけの買い物ができないからです。

インフレ率等を計算した上での価値として現在割引価値という考え方があります。これは将来の100万円が現在の価値に直すと一体いくらなのか?という計算です。

例えばインフレ率が2%の社会を考えてみましょう。この場合に現金100万円を10年間持ち続けた場合、10年も当然100万円のタンス預金があるわけです。

ちなみに、この場合、10年後の100万円を現在割引価値に換算すると約82万円になります。つまり、現金としてそのまま持ち続けた場合は、価値は減価してしまうのです。これがインフレリスクになります。

このように、インフレ率がわずかであればたいした影響はないかもしれませんがインフレ率が大きくなるとその影響は甚大となります。仮に10%のインフレが10年続いた場合、今ある100万円は10年後にはわずか約38万円の価値にしかならないことになってしまいます。

特に近年はインフレよりも「デフレ」と呼ばれる経済状況にありました。そのため、なかなか理解しにくい点ではあると思いますが、こうしたインフレに対するリスクはしっかりと考えておく必要があります。

インフレというのは貨幣価値【お金の価値】の下落を意味します。そのため、より現金に近い性質の資産ほどインフレの影響を受けやすく、逆に実物に近いものほどインフレの影響を受けにくくなります。

資産運用商品で見ると確定利回り(固定金利)の商品はインフレによる影響を受けやすく、変動金利の商品はインフレによる影響を受けにくくなります。

中長期的な資産設計をしていく上では、資産ポートフォリオの一部をインフレに強い資産にしておくことが推奨されます。

 

インフレリスクに弱い資産

  1. 現金
  2. 定額年金、運用性の高い終身保険、養老保険など
  3. 預金(特に長期の定期預金)
  4. 債券(特に満期までの期間が長期のもの)

まず、インフレリスクに最も弱い資産が現金です。これは先ほどの例を見ても明らかなように、資産が全く増加しないからです。インフレ下では「増加しない=実質的な減少」となります。また、預金や債券には利息・利子がつきます。こうした利息や利子はインフレ率にある程度連動しますが、長期の定期預金、満期まで期間が長い債券などはインフレが進行した場合、それに利息・利子の大きさが追いつかない場合があります。

ただし、債券の中には金利が上昇するとそれに合わせて金利も変動する変動金利型の債券もあります。こうした債券はインフレにやや強い性質があります。
(例として10年物個人向け国債など)

たとえば、2013年の物価上昇率は1.44%でした。それに対して1年満期の定期預金の金利は高いところでも0.3%くらいです。と考えると、2013年に資産を定期預金(1年満期)で運用していた場合には実施的には1%程度の「資産が目減り」した計算になるわけです。

 

インフレリスクに強い資産

  1. コモディティ(商品投資。貴金属など)
  2. 土地・不動産
  3. 株式

一方でインフレリスクに強い資産としては以上のような資産が挙げられます。どれもその商品自身に価値画ある商品です。貴金属は従来から価値があるものとされていますし、土地や建物も一般的にインフレ経済の下では価値が上昇します。

株式の場合は、企業の所有権が含まれ、企業の持つ現物資産の価値上昇に加え会社の売上もインフレに応じて上昇するためインフレに強く、一般的にインフレ下では株価が上昇し対インフレリスク商品となります。

 

逆を考えると、「負債」が多い家計はインフレがうれしい?

「借金(負債)」は資産ではありませんが、インフレによって実質的な価値の減少をもたらします。たとえば、2000万円の住宅ローン(固定金利)はインフレが進むほど、実質的な借金の額は減少していきますので、インフレ率以下の固定金利住宅ローンはインフレリスクに強いといえます。

ただし、変動金利タイプの負債についてはインフレ率に合わせて金利(利息)もアップする可能性が高いのでインフレリスクに強いとまでは言えません。あくまでも固定金利タイプが対象です。

低金利時代に長期固定金利の住宅ローンを組むというのは戦略的には正しいといえます。住宅ローン(固定金利)の現状については「35年固定金利(フラット35)比較」で最新の金利状況をご確認いただけます。

 

インフレリスクに強い家計は現役世代、リタイヤ世代はつらい

なお、こうしたインフレリスクに強いのは現役世代です。
現役世代はインフレによる資産価値の目減りはあるものの、給料の増加という形でカバーすることができます。資産自体もリタイヤ世代と比べると小さいというのも影響を小さくします。

その一方でリタイヤ世代は給料のような物価上昇に連動して増加する収入源を持つ人が少なく、資産の切り崩しに頼っている方が多いです。こうした方は資産価値の目減りが直接的に影響してきます。

一応公的年金(国民年金、厚生年金)は物価の上昇に合わせて支給額も上昇する仕組み(物価スライド)があるのである程度はカバーされるようにはなっています。
ただし、「老後費用と老後資金の備え」でも書いている通り、現時点でも将来的にも年金だけで老後の生活を賄うというのは不可能です。

となってくると資産のポートフォリオをインフレリスクに弱い預貯金のみではなく、株や投資信託、不動産といったインフレリスクに対応できる形を組み込んでおくことが大切と言えるでしょう。

「インフレリスクとは」の用語解説

ここではこのページで使われた様々な用語について解説をします。リンク先は「金融経済用語辞典」の用語解説ページ、または関連情報が掲載されているサイトです。

インフレーション(インフレ)とは
貨幣価値の下落のこと。物価上昇とも取れる。

デフレーション(デフレ)とは
貨幣価値の上昇のこと。物価下落とも取れる。

物価スライドとは
公的年金制度において物価上昇(下落)に対して支給される年金額が増減するしくみ

資産運用の基礎知識

金融・経済の基礎
資産運用の基礎では、資産運用とは何なのか?また、資産運用において押さえておきたいポイントを分かりやすく解説します。
資産運用の始め方
資産運用の始め方では、資産運用の心構えや投資の基本。投資に関するスタンスなどを紹介。
投資の基礎・考え方
投資の基礎・考え方では、今後始める「投資」について、投資の意義や投資全般について押さえておきたい項目などを解説。
資産運用で気をつけたいポイント
資産運用を始める上でぜひ理解しておきたい制度上・税務上の注意点などを紹介します。