見せ玉(見せ板)とは?注文・取消しの判断
結論:注文の取消しだけで「見せ玉」になるわけではない
情報基準日:2026年7月17日
見せ玉(見せ板)とは、他の投資者に相場が自然に形成されたと誤解させて取引へ誘い込む目的で、約定させる意思のない買い注文・売り注文を出すことです。金融商品取引法の相場操縦規制に該当するおそれがあります。
価格変動、資金・保有数量の確認、入力ミスなどを理由に、約定前の注文を取り消すこと自体が直ちに違法になるわけではありません。注文の目的、数量・価格帯、板への影響、反対側の自己注文、取消しの時点、反復継続性などを総合して判断されます。
通常の注文変更と、見せ玉の疑念が強い注文
| 場面 | 確認する事実 | 考え方 |
|---|---|---|
| 相場が変わり、約定前に指値を変更・取消し | 発注時には実際に約定させる意思があり、状況変化に応じた判断か | 取消しだけで直ちに見せ玉とはいえない |
| 桁・売買区分・数量の入力ミスを発見 | 誤注文を速やかに取り消し、同じ誤発注を演出目的で繰り返していないか | 誤発注を放置して約定させる必要はない。取消理由と時刻を記録する |
| 通常規模を大きく超える注文で板を厚くする | 約定意思、価格帯、数量、板への誘引効果、反復性 | 疑念が強まる判断要素 |
| 反対側の自分の注文が約定後、大量注文を取消す | 大量注文が反対側の注文を有利に約定させるためのものだったか | JPXが示す典型的な判断要素 |
| 寄付き直前に大きな成行注文を取消す | 予想対当値段を意図的に動かし、別の自己注文を有利にしたか | 寄付き前の見せ玉として注視される |
「取消しを避けるため、不要な注文をそのまま約定させる」という対応は適切ではありません。誤注文や投資判断が変わった注文は速やかに取り消し、板を演出する目的の注文を出さないことが基本です。
見せ玉の仕組みを板の例で確認
JPXは、現在値500円の銘柄を保有する投資家Aが、次のような注文で高く売ろうとする例を示しています。
- Aが約定させる意思のない買い注文を496円から499円に合計400単位出し、買い板が優勢なように見せる。同時に、保有株10単位を505円で売り注文する。
- 厚い買い板を見た他の投資者が上昇を予想して買い、株価が505円まで上がることで、Aの保有株の売り注文が約定する。
- Aは役目を終えた大量の買い注文を取り消す。
問題の中心は、400単位という数字だけでも、取消しだけでもありません。約定させる意思のない注文で需給を実態より強く見せ、他の投資者を誘い、反対側の自分の注文を有利に約定させる一連の行為です。売り板を厚く見せて安く買う逆のパターンもあります。
寄付き前の見せ玉
寄付き前は、注文状況から予想対当値段が表示されます。JPXは、約定意思のない大きな成行買い注文で予想対当値段を500円から505円へ引き上げ、第三者の買い注文を誘った後、寄付き直前に成行買い注文を取り消し、別に出した505円の売り注文を有利に約定させる例を示しています。
寄付き前の注文取消しが一律に禁止されるのではありません。予想対当値段を意図的に動かす目的、約定意思、反対側注文との関係、取消しのタイミングなどが問題になります。
JPXが示す5つの判断要素
JPXの相場操縦FAQは、証券取引等監視委員会が示した見せ玉の判断要素を次のように整理しています。
- 自分の売り注文(買い注文)が約定した直後に、反対側の買い注文(売り注文)をすべて取り消している。
- 指値の価格帯や数量が、買い板(売り板)を厚く見せ、他の市場参加者の注文を誘う効果を持つ。
- 同様の行為を反復継続している。
- 通常の取引規模に比べて過大な数量を発注している。
- オーバーナイトでポジションを持たない日計り取引者が、不成り買い注文を行っている。
これは機械的な「何株以上」「何回以上」という安全ラインではありません。銘柄の流動性、通常の取引規模、時刻、価格帯、他の自己注文、約定・取消しの順序など、取引全体が分析されます。
2025年度にも少額の課徴金勧告事例
証券取引等監視委員会の令和7(2025)年度年次報告では、最良気配値近辺の板を徐々に厚くする見せ玉等による相場操縦が確認されています。また、個人投資家が6銘柄で引け条件付き成行売り注文を「特殊見せ玉」として使い、他の投資者の取引を実質的に排除して価格へ影響を与えた事案では、課徴金額が10万円でも、継続的・意図的で悪質として勧告されました。
「少額だから」「1日だけだから」「別の口座を使えば分からない」という考えは危険です。JPXは注文・約定データを幅広く抽出・分析し、不公正と疑われる取引を証券取引等監視委員会へ報告しています。
見せ玉と疑われないための発注ルール
- 注文時に約定意思を確認:その価格に到達したら本当に売買する数量だけを発注する。
- 反対側注文との関係を確認:保有株を売るために買い板を厚くするなど、板を演出する注文を出さない。
- 通常規模を大きく超えない:資金・保有数量・銘柄の流動性に対して不自然な大量注文を避ける。
- 取消理由を残す:誤入力、資金確認、ニュース、価格変動など、発注と取消しの理由・時刻・注文番号を取引メモに残す。
- 自動注文も事前検証:アルゴリズムやAPIで大量の発注・訂正・取消しを繰り返さないよう、数量上限、回数制限、停止条件を設定する。
- 照会には事実で回答:証券会社から確認を受けたら、注文目的、資金、保有数量、取消理由、他の注文との関係を正確に説明する。
誤注文・取消しを繰り返してしまったとき
- 不要な注文は速やかに取り消し、板を演出するための新しい注文を重ねない。
- 注文番号、銘柄、売買区分、価格、数量、発注・訂正・取消時刻、理由を保存する。
- 同じ画面操作や自動注文設定に原因があれば、発注上限や確認画面を設定して再発を止める。
- 証券会社から警告・照会があった場合や、反対側注文を有利にする形になった懸念がある場合は、証券会社のコンプライアンス窓口や弁護士等へ相談する。
よくある質問
株価が近づいて怖くなり、買い注文を取り消すと違法ですか?
取消しだけで直ちに見せ玉とは判断されません。発注時の約定意思、取消理由、数量、価格帯、反対側注文、反復性などで判断されます。ただし、約定意思のない大量注文と取消しを繰り返すことは避けてください。
注文が一部約定してから残りを取り消す場合は?
一部約定後の取消しも、それだけで違法とは限りません。最初から全量を約定させる意思があったか、残数量、相場変化、反対側の自己注文との関係などが確認点です。
小さな注文なら問題になりませんか?
一律の安全数量はありません。流動性の低い銘柄では小さく見える注文でも板への影響が大きいことがあります。少額の課徴金勧告事例もあるため、金額ではなく目的と注文全体で考えます。
複数口座や家族名義を使えば別注文になりますか?
借名口座の利用は禁止され、複数口座を使っても売買データ等から分析されます。口座を分けることで不公正取引が適法になることはありません。
一次情報
このページは一般的な情報提供であり、個別の注文が法令違反に当たるかを判断するものではありません。
証券口座を選ぶ前の保護制度・コスト確認
分別管理が適切なら顧客資産は原則返還されます。返還できない場合の投資者保護基金は、値下がり損を補償する制度ではありません。 |
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